頭蓋骨の中に引きこもっています【2024年2月1週/今月の本棚】

インターネットを眺めていたら嫌なニュースがあって、嫌な気持ちになっていた一週間だった。
先週の日記で金カム実写を褒めたばかりなのに、その裏にはああいう事例もあり、多くの作家が同様の告発をしている。わぁ~~(しょんぼり)

 

鬱々とした気持ちで選書をした結果

 

俺たちが入り浸っていた頃のヴィレヴァンに寄ってっちゃった。

 


左から

○えーえんとくちから/笹井宏之
短歌に明るくないが、人から勧められたこの本は気に入っている。抽象性と具体性を併せ持ち、見たことがないのに懐かしい風景のような透き通った幻。
どのページを開いても、子供の頃に失くしてそれきり忘れていた宝物を見つけた時のような気持ちになれて良い。

手のひらのはんぶんほどを貝にしてあなたの胸へあてる。潮騒  

――『えーえんとくちから』笹井宏之/ちくま文庫

 


真実真正日記/町田康
気負わずに読める文章、作風が町田康のいいところで、それが突き抜けているのがこの作品だと思う。
自然体なエッセイ風の文章の端々に滲む奇妙奇天烈な世界観、時代が巡って正に今の若者にウケそうな感じがしませんか? そのうち爆発的なリバイバルバズリが起こりそう。起こらんか。
インターネットに自分の生活を記すことに飽きたら、当ブログは最終的にああなります。テリブルテリブル。

 


失踪日記/吾妻ひでお
そのうち見えない何かに追われてあじま先生みたいに失踪しそうな気がするので、教科書として大切にしている。
自身のホームレス生活、病棟生活をポップに描いているエッセイ漫画の金字塔。ポップに描いているからといって内容は全くポップではない。
エンタメとして茶化してはいけないが、精神疾患の患者が入院している病棟内の物語がかなり好きかもしれない。誰もが切迫しつつも必死に生きているな……と思うので。

 


ミスミソウ/押切蓮介
思春期のフラストレーション、田舎の鬱屈、生まれ持っての異常性、救われない復讐譚、誰しもが嫌な気持ちになれる伝説の書!
私は南先生が大好きです。他にも愚かで惨めで可哀想な加害者たちがたくさん出てきて最高! いや最悪!
奇しくも先週観た金カム同様、山田杏奈主演で映画化していますね。雪の時しか映像に収められない妖精?

 


コンセプトを決めて選書はしないと言ったものの、自分一人の気分で手持ちの本から選んでいるのでなんとなく系統はある。今回は「人間とか社会生活とか最悪かも~~自分の内面世界だけで一生孤独に遊んでいたいな♪」という印象を受ける。嫌なニュース見たからだね。

 

 

そもそも私は件の原作もドラマも見ていないので口を挟む権利がなく、誰かに対して糾弾をする立場ではないので閉口せざるを得ないのだが、傍から見ていても無関係っぽい人が熱を込めて色々喋ってるのも嫌だった。

 

発言権があることと発言力があることを混同してはならないし、良くも悪くも画面の奥にいるのは一人の人間でしかなく、どれだけフォロワーがいても拡散されていても全て一意見でしかない。発言権があるだけで偉くなった気になってはいけないな……と自戒も込めて一週間考え続けていた。


頭蓋骨の中、100年後には全て消えている有機物の電気信号。本当は誰の人生にも何の意味もないのに、「誰もが自分の物語の主人公」だと都合のいいまやかしを皆で信じた結果、必要以上に的外れな当事者意識を持ってしまう人類。うわぁ~~(発狂)


こんな日記だって意味ないしSNSなんて全員やめた方がいい、楽しさ便利さを求めてインターネットを誰もが手の届く場所にした結果がこれだよ!
もう畑でも耕そうよ。こんな液晶板捨ててさ。
そんなことを考えながら今日もまた、液晶板の中の電気信号と頭蓋骨の中の電気信号が繋がっているような気がして、頭が良くなったような気がして、偉くなったような気がして、インターネットをやっている。

 


お前インターネット向いてないけど一生やめられないんだろうな。

 

 

ミラー(note)

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